電化がエネルギー転換の次の段階を牽引する

IRENA「1.5℃ロードマップ」改訂:地政学的、市場的現実を反映し、化石燃料のより迅速な削減と2035年までの世界電化率35%を目標として設定

アラブ首長国連邦アブダビ、2026年5月20日 – 高まる地政学的緊張、急増するエネルギー需要、そして化石燃料市場の変動により、世界のエネルギー情勢は再編されつつある中、電化と再生可能エネルギー、そして化石燃料からの脱却の加速を軸とした、世界的なエネルギー転換は新たな局面を迎えようとしています。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、新たな報告書『化石燃料からの脱却:再生可能エネルギー・電化・送電網の強化に基づくロードマップ』において、今日のエネルギー安全保障上の懸念に加え、現在のエネルギーシステムは、1.5℃の気候目標を達成するための構造的な準備が依然として整っていないと警鐘を鳴らしています。

コペンハーゲン気候閣僚会合に先立ち、COP30議長国であるブラジルとの協力の下で発表されたこの報告書は、2030年までに再生可能エネルギー発電容量を3倍にし、エネルギー効率の改善を2倍にするという世界的な目標は依然として極めて重要であるものの、それだけでは世界的なエネルギー転換を達成するには不十分であるとしています。

運輸、産業、建築、デジタル化の各分野でエネルギー需要が急速に増加する中、化石燃料からの脱却を進めつつ、これらの最終消費部門の電化を推進することがエネルギー転換において重要です。

まもなく発表される『世界エネルギー転換展望』におけるIRENAの改訂版「1.5℃シナリオ」では、世界のエネルギー消費に占める電力の割合が、現在の23%から2035年には35%、2050年には50%以上を超える水準まで高まると見込んでおり、その需要増の大部分は再生可能エネルギーによって賄われるというシナリオを提示しています。 同シナリオでは、各セクターにおける化石燃料の割合が、現在の80%から2035年には50%、2050年には20%以下へ低下することを想定しています。

IRENAのフランチェスコ・ラ・カメラ事務局長は「世界は新たなエネルギーの現実に適応することが求められています。再生可能エネルギーを3倍に増やし、エネルギー効率を2倍にするという目標の先には、エネルギーシステム全体を変革し、需給の両面で化石燃料の使用を削減するという、より広範な課題が待ち受けています。電化と化石燃料の段階的廃止は不可分であり、これらは並行して推進していかなければなりません。」と述べています。

ラ・カメラ事務局長はさらに次のように付け加えています。「IRENAの改訂ロードマップは、再生可能エネルギーによる電化が複数の政策目標に資することを明確に示しています。電化は気候変動の緩和に貢献するだけでなく、化石燃料輸入への依存を減らすことでエネルギー安全保障を強化することや、新たな産業バリューチェーンやイノベーションの創出を通じて経済競争力の向上にも貢献します。さらに、コスト競争力のある再生可能エネルギーは、家庭部門および産業部門向けの電力価格を抑制するうえでも重要な役割を果たします。」

同報告書は、主要な最終消費部門すべてにおいて、電化が化石燃料の使用の減少を牽引する主要な構造的要因になりつつあると指摘しています。なお、化石燃料からの脱却は、エネルギーインフラと投資配分の抜本的な再構築を意味しています。

増大する電力需要に対して、各国は信頼性が高く、安全で、手頃な価格の電力システムを確保するために、送電網、蓄電設備、およびシステムの柔軟性への投資を同時に進める必要があります。

しかし、インフラが重大な課題となっています。約2,500ギガワット分の風力・太陽光発電が送電網への接続に向けて待機している状況であり、許認可の迅速化と投資の拡大なしには2035年および2050年までに要求されるインフラの拡充を見込むことができません。IRENAの推計によると、送電網への投資需要は年平均1.2兆米ドルに達し、これは2025年の投資額である0.5兆米ドルの2倍以上となります。

また、水素や代替燃料のサプライチェーン、さらには最終消費部門の電化と、それを可能にするインフラに対しても、大きな投資が必要となります。その対象は、EV充電設備の設置から建物の改修、電気式冷暖房設備の導入、さらには産業部門の電化にいたるまで多岐に渡ります。

ラ・カメラ事務局長は「化石燃料の段階的廃止のスピードは、結局のところ経済の電化がどれほど迅速に進められるかにかかっています。1.5℃目標を達成可能な範囲に留めるためには、世界全体として明確な方向性を持つことが必要です。IRENAの分析は、2035年までの世界的な電化目標の設定をサポートするものであり、これに送電網とシステムの柔軟性に関する目標を併せて組み込むべきことを示しています。」と述べています。

本報告書はまた、各国の取り組みを支援し、国際協力を推進するうえで、電化、送電網の強化、および化石燃料の減少に関する進捗状況をモニタリングすることの重要性を強調しています。

COP28では、パリ協定に基づく「UAEコンセンサス」および「第1回グローバル・ストックテイク」において、2030年までに再生可能エネルギーを3倍に、エネルギー効率を2倍に高めることが求められました。また、化石燃料からの脱却(TAFF)に向けた重要な基盤も確立されました。COP30のブラジル議長国が策定し、IRENAが支援するTAFFロードマップは、気候変動対策、エネルギー安全保障、そして開発目標を並行して推進するための重要な道筋を示しています。

IRENAは、アンタルヤで開催されるCOP31に向けた国際的な議論に貢献するとともに、分析、パートナーシップ、各国との連携を通じて各国を支援する用意があります。

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